しもけんのエッセイ?!
© 1999 Kentaro Shimoda <shimoken@shimoken.net>

第1回 『吹奏楽というジャンル』という言葉について (Sept. 23, 1999)

私は、「吹奏楽」が好きだ。

だがしかし、音楽評論一般で「吹奏楽」というジャンルはあまり好まれず、さらには一段低く見られる傾向にある。

なぜだろうか、と考える。

そこで、ふと思った。

「吹奏楽というジャンル」とは、一体何をさしているんだろうか。

「吹奏楽」という言葉は、「管弦楽」などと同様、本来演奏形態を指し示す言葉ではないのか。

そうしたときに、「オーケストラというジャンル」とか、「バンドというジャンル」などという使い方をするだろうか。

そんなことはまずないだろう。

にもかかわらず、「吹奏楽というジャンルには…」という文章のみはしょっちゅう目にする。

こういう言葉を使う人達はいったいどんなものを「吹奏楽というジャンル」でまとめているんだろうか。

ここでとりあえずの仮説を立ててみる。

「吹奏楽というジャンル」=「どんなものでも中途半端にクラシカルな音色・音質で、中途半端なリズム感を伴い、さらにはいやらしいダイナミクスで演奏されるもの」

これでおおかたの「吹奏楽というジャンルには…」という文章は矛盾がなくなる。

しかし、これは巷の学校の吹奏楽部の指導環境によるものではないのだろうか。

管弦楽曲のアレンジをやる時には「○○高校の△△年の全日本吹奏楽コンクールの名演」のみを聴かせ(変な「カット」していない本物の「名演」を聴かせず)、吹奏楽の古い(といっても2、30年前の)オリジナル曲を蔑視して譜面のみで練習させ、さらにはポップスはじめ邦楽、洋楽などをやろうとすれば指導者すらがその原曲を知らず(もちろん生徒たちは知る由もない)に「参考演奏」のみを模範とする体質によるものが大きいと思われる。

こんなことだからこそ「どんなものでも中途半端にクラシカルな音色・音質で、中途半端なリズム感を伴い、さらにはいやらしいダイナミクスで演奏する」ハメになってしまうのである。

実際、いわゆる「コンクールの名演」にも人々を感動させ得るだけのものはあるし(そんなに多くはないが)、また、プロの吹奏楽団によるポップス等の参考演奏などもやはり自分たちと同じ譜面を使っているのである程度参考になる。

しかし、たとえばカセットテープをダビングする時に、一度ダビングされたテープからダビングするよりもマスターであるCDやDATからダビングした方が遥かに質が良い。

これと同じ事が吹奏楽にも言え、参考演奏を聞かせるよりも、管弦楽やバンドなど、そのオリジナルの演奏形態による原曲を聴かせたほうが遥かに効果があがることと思われる。

なぜならいくら参考演奏といえど、現在市販されているそれはほとんどがクラシックの専門家によるものだからだ。

すなわち、この時点で考えると、一見矛盾するようだが極端な話大編成の管弦楽作品は、アレンジと演奏が良ければ吹奏楽による参考演奏のみでも十分な効果を発揮するのである。(かといってもちろん完全ではないが)

話が大分それたが、ようするに私が言いたいことは、
「クラシック専門のプロが演奏したジャズやポップスはどうしたってクラシカルな演奏になってしまう」
ということである。

しかしながら別に全ての吹奏楽団がクラシックを専門としているわけではないのである。

ましてアマチュアともなれば、「音楽」という字のごとく、音を楽しめばいいのである。

そうであれば、別に奏者も「クラシックの奏法」のみにこだわる必要なんて全くないのである。

別にプロでもジャズとクラシックの2足のわらじを履いている素晴らしい音楽家がいる。

音楽を聴くのが好きな人は、そのほとんどがジャンルにはこだわらない。

だとすれば、「無限の色彩と能力を持つ」吹奏楽なのだから、その奏者それぞれがいろんな音楽をできるようになれば、全体ではその何倍もの音楽をできるようになるのではないだろうか。


このところ世間ではクラシック以外のものも演奏できる団体が増えてきたように思う。
(依然として中途半端な音楽しか知らない団体は多いが)

また、クラシカルなオリジナル作品をちゃんと演奏する団体も出てきた。
(管弦楽アレンジ物の上手い団体は前からある程度あるが)


そろそろ吹奏楽も、「吹奏楽というジャンル」から「吹奏楽」(演奏形態)になってもいい頃ではないかと思う。

そうなってこそ、吹奏楽のオリジナル曲もジャンルを問わず増えてくることと思う。

・・・だって、その方が演奏する側としても楽しいでしょう?

だからその時まで、

僕は「吹奏楽という形態でいろんな音楽をやるのが好きです」

と言い続けたい。

※書きっぱなしのため、文章にまとまりがないことをご容赦下さい。

© 1999 Kentaro Shimoda <shimoken@shimoken.net>

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